出会ってしまったSo Kate.
最初は足に馴染んだJimmy Chooで
撮影に臨もうと思っていたのに。
美しき変態靴を迎えてしまい
もはやSo Kate以外での撮影は考えられなくなってしまった。
撮影の場所は銀座。
当日は最初にメイクアップ、ヘア、撮影担当の3人の方と
イメージなどを軽く打ち合わせをした。
私は、キリッとしつつエレガンスを感じさせたいこと
上半身のショットでは、薔薇を持ちたいこと
そして
ハイヒールコーチをしているので、この靴を履きます。
そう言ってSo Kateを見せた。
その瞬間、場の空気が一気に変わった。
担当してくださる3名の緊張感が、グッと高まったのを感じながら
この靴のイメージで、赤と黒で行きたいから
リップをこの赤に合わせて欲しい。
全身のショットは、ヒールの高さとレッドソールが際立つように。
そう伝えると、カメラマン氏の目が明らかにキラリと光った。
やはりSo Kateのインパクトは大きいようで
ヘアメイク中に担当のお二人から、ハイヒールコーチの仕事や
ルブタンのハイヒールについて色々と質問をされた。
そしていよいよ撮影。
私はモデルではなく一般の主婦で会社員で
このような撮影は全く初めてだった。
ポージングなども習ったことはない。
だから撮影のためのテクニックは、ほぼゼロ。
ただ、今までに習得した体のポジション、立ち方など繊細に気を配り
私の世界観を撮るのだ、という意識だけはぶれないようにした。
ルブタンの靴に負けないように。
まずは上半身のショットを撮影し、続いて全身ショット。
ヒールの高さとレッドソールが際立つ角度はどこか。
カメラマンのSさんはベストな角度を決めるために
何度もテストをしてくださった。
最終的には、カメラに向かってほぼ真横に立ち
そこから腰に手を当てて上半身を捻ってゆきながら撮影をした。
全ての撮影を終え、最終的に選んだ2枚の写真が
先日公開した、こちらの2枚である。
Sさんが全身ショットの写真を見ながら
「皆、付いていらっしゃい!という感じですね。」
と仰ったのは笑ったが
これは、一番最後に撮影した一枚だった。
購入したばかりで足に馴染んでいないSo Kateは
そろそろ限界で、かなりしんどかった。
それを堪えて、更に肘を引き
身体に震えが走るほど、上半身をグッと捻ったラストショット。
その緊張感が、Sさん曰く「付いていらっしゃい!」な
雰囲気になったのかもしれない。
柔らかさのある表情の半身と、緊張感のある全身。
静と動だな、と思った。
ハイヒールの哲学では、歩きは単なる歩きではなく
膝の抑揚で静と動を表現してこそ
深みのある歩きとなる。
静と動 男性性と女性性
誰の中にも必ずある二つの要素。
特に意識した訳ではないが、図らずもこうして
写真として表現できたのが嬉しかった。
何よりも、自分にも表現したい世界があり
それを形に出来たのが、本当に嬉しかった。
これにはSo Kateの力が大きかった。
あの時、安全を狙って今の自分でも履けそうな靴を選んでいたら
この雰囲気は出なかっただろうと思う。
美しいものには、強いパワーがある。
表現したいものがあるなら
今の自分に出来るギリギリのところ
そこから更に少し先を狙って挑戦すること。
そのように挑戦したものには
凝縮されたエネルギーが宿っている。
マレーシア クアラルンプールより愛を込めて
Nana