2018年2月25日日曜日

忘れ得ぬ友へ

今朝は慌しかったため、ストレッチとエクササイズをする時間が無かった。
そのため先ほどストレッチと素足のエクササイズを行った。

骨盤のストレッチをしながら、フジ子 ヘミング演奏の
ラヴェル「亡き王女の為のパヴァーヌ」を聴いていた時、
ふと、一人の友人を思い出した。

今日は、その友人について綴りたいと思う。



私が20代後半で、まだ東京にいた頃。
私には一人のトランスジェンダーの友人がいた。
彼と呼ぶか彼女と呼ぶか、少し考えたが、
ここでは、友人の魂の性にレスペクトを表し「彼女」とさせていただく。


彼女は多くのトランスジェンダーの方がそうであるように、
とても美意識が高く、女性よりも女性らしさを研究し、演出する術を心得ていた。
手先が器用で何でもセンス良くこなし、料理も上手だった。
メイクは若干厚めであったが、それでも私などより遥かに上手で、
要するに私よりも、ずっと女性らしかった。

平日は仕事の関係で、止む無く男性の外見をしなければならず、
それは彼女にとって、とても苦痛であったと思う。
彼女と私は気が合い、週末は度々彼女と一緒に、クラブへ出かけたり、
彼女の部屋で手料理をご馳走になったものだ。
そんな時の彼女は、魂の性である女性の姿で、とても伸び伸びとしていた。


実は人生で初めて、私に「結婚しよう」と言ったのは彼女である。


彼女とお酒を飲んでいた時に、半ば冗談で、彼女が私に
「すごく結婚したいし、子供が好きだから子供が欲しい。
Nanaちゃん、私と結婚しようよ。
人工授精で子供作って、あとはお互いボーイフレンド作ればいいじゃない。」
と言ったのだ。私は、
「あなたが私のボーイフレンドを好きになったらどうするのよ。
私はあなたと男性の取り合いをするのは御免だから、結婚はお断り。」
と笑いながら丁重にお断りした。

それは、冗談に隠した彼女の本音だったと、今では分かる。
いつもおどけていたけれど、本当に心優しく、子供が好きだった彼女。
結婚したがっていた彼女が結婚せず、
さして結婚や出産に興味がなかった私が結婚し、
3人も子供を産んだことを思うと、運命とは何だろうと思ってしまう。

マレーシアに移住する直前、私は自分の服をいくつか、彼女にあげた。
彼女はとても喜んでいた。
それが、彼女に会った最後となった。


マレーシアに移住して数年経った頃、共通の友人から、
彼女が病気で、もう長くないということを聞いた。
もし会いたいなら、今 会っておいたほうがいい。
そう言われたが、
幼い子供を抱えていた私は、すぐに帰国は出来ず、
彼女に会うことは叶わなかった。

聞くところによると、私がマレーシアに移住した後、
彼女は仕事を辞め、夜の世界で女性として生きていたという。

安定した仕事と収入を捨て、魂の性に従って生きることを選んだ彼女。
それは、とても勇気ある、だが魂の声に従った選択だったのだろう。
男性として、女性と交際しようとして挫折した時、
友人に手ひどい裏切りを受けた時、
尊敬していた師から、トランスジェンダーを理由に絶縁を言い渡された時、
そんな時の彼女の、
「ま、いいわ。これが私の人生だもの。」
という言葉と、深い瞳の色を思い出す。


もしも今、ハイヒールコーチを目指す私を見たら、
彼女は何と言うだろうか。
目を輝かせて、
「素敵!私、絶対に習いたい!」
と言うに違いない。
そしてその後に、
「あんた女らしさが足りないから、もっと勉強しなきゃだめよ。」
と、痛烈な一言を忘れないだろう。


彼女を懐かしく想い、私はひとつ決心をした。
私が独り立ちしたら、私の門は女性だけでなく、トランスジェンダーの方にも開く。


世間の常識や法律では、性別は生まれ持った遺伝子に従い、
「男性」か「女性」どちらかに振り分けられてしまう。
だが私がこれから行こうとする道は、常識や法律に縛られない「美」の世界だ。

年齢、国籍、生物学上の性は全く関係ない。
Skypeを使えば、場所すら関係ない。
誰よりも女性らしく、美しくありたいと願う方ならどなたでも、
私の前では、思い切り女性性を発揮していただきたいと思う。

その為に、まだまだ足りないところだらけの私は、精進が必要だ。



私にひとつのビジョンを示してくれた大切な友。

あなたに、心からのレスペクトを込めて今日のBlogを捧げます。




マレーシア クアラルンプールより愛を込めて
Nana



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